ひとりぽっちの夏休み

 わたしは、海野若菜。四年生。あだなはワカメ。
 ほんとうは、そんなあだなイヤなんだけど・・・。
 同じクラスのマモピーこと、森山マモルがつけたんだ。
 カタカナで「ワカナ」って書いたら、「ワカメ」に見えたらしい。
 マモピーは海の中でゆらゆらゆれているワカメみたいに、体をゆらしながら、「ワカメ~ワカメ~、うみの~ワカメ~」って、いうの。へんな、ふしをつけて。あたまにくる。
 けれど、いいかえせないわたし・・・。
 わたしって、ひっこみじあん。思っていることがいえないのが欠点。
 このあいだも・・・。
「ワカメ、鼻血ついてるぞぉ。チョコの食べすぎだろう」
 マモピーがにやにやしながら、しかも大声でいったの。
 わたしはあわてて、鼻の下に手をやった。すると、ケチャップがついていた。朝ホットドッグを食べたときについたんだ。
 もう、やだぁ。思い出すだけでもはずかしい。
 それから、こんなことも・・・。
 雨あがり。水たまりをとびこそうとして、私は水たまりに落ちた。
 わたしのくつはドロだらけ。そして運わるく、そばにいたマモピーのズボンにも、おもいっきりドロがはねた。
「この、ドジ!」
 わたしは、マモピーに頭をたたかれた。
「ちょっと、なぐることないじゃない」
 となりにいたサヤちゃんがマモピーのランドセルをベシッとたたいて、おかあさんにいいつけるよ、といってくれたけど、
「このチクリ魔!」
 マモピーはそういっただけで走っていった。
 サヤちゃんとマモピーは、家族ぐるみでなかがいい。ふたりは、赤ちゃんのときの公園デビューがいっしょで、幼稚園も小学校もいっしょのクサレエンなんだってサヤちゃんがいってた。
(続)