1 さがしものは・・・

 どうしよう。
 どうしよう、どうしよう、どうしよ~!
 日曜日の、けだるい夏の午後。
 ムシムシと暑い部屋の中、あたしはおしいれに頭をつっこんで、あるものをさがしていた。
「ないよぉ・・・。」
 頭をほこりだらけにしながら、泣きそうになった。
 こんなところに、あるわけないのはわかっている。でも、さがさずにはいられない。
 だって、すっごく大切なものだから。
「めぐみ、お昼ごはんよ~。」
 一階の台所から、お母さんの声が聞こえてきた。グラタンの、いいにおいがする。でもあたし、食欲なし。
「いらない。」
 そういったら、ダダダッと、階段をかけのぼる音が聞こえてきた。
「どうしたの!?」
 お母さんが、血相を変えて、あたしのおでこに手をあてた。
「めぐみがごはんいらないなんて、おなかでもこわしたの? どんなに熱があっても、食べるくせに・・・。」
 おかーさん! それはないんじゃない? かわいいむすめに対して、そんないい方・・・。まぁ、ホントだから、しょうがないか。
 はぁっと気がぬけて、いいかえす元気もなかった。
「とにかく、横になったら? あしたも具合わるかったら、学校休んでいいから。」
「・・・うん。」
 あたしはいわれたとおり、ベッドにもぐりこんだ。できることなら、もう出たくない。学校も、ずっと休みたい。
 そしたらみんな、ちょっとは心配してくれるかなぁ。ぐしっと、涙があふれた。
 顔を出して天井を見あげたら、つぎつぎとみんなの顔が浮かんだ。
 仙崎サヨリなら、班長だから、心配してくれるかな・・・。
 いやいや、ジコチューで女王様だから、きっとお見舞いにもきてくれないだろうな。それどころか、「また、ひろったものでも食べたんじゃないの? オホホ~」なんて、わらうかもしれない。
 春名結城なら、料亭の息子だし、食べものでも持ってお見舞いにくるかも!
 いやいや、男尊女卑の日本大好きバカだから、あたしのことまで気がまわらないだろうな。それどころか、「これで、教室もしずかになる。かごめもすこしは、おしとやかになるだろう」とか、いうかもしれない。
 そう思ったら、ムカムカして、体がカッカと熱くなってきた。あ~、ほんとうに熱が出そう!
(続)