この絵本の舞台は、日本の最南端、沖縄県の八重山諸島です。
 八重山諸島には、石垣島、竹富島、小浜島、黒島、新城島、西表島、鳩間島、波照間島、与那国島、由布島といった人が暮らす10の島とそのほかいくつかの無人の島がありますが、この絵本は、おもに石垣島を舞台にしています。

 ひこおじぃが使う「なぁんくくるん(ナァンククルン)」という方言は、石垣島の白保地方で使われることばで「何とかなるよ、だいじょうぶだよ」といった意味を持っています。同じ意味のことばに沖縄本島で使われる「ナンクルナイサー」があります。こちらは、テレビドラマなどで使われたこともあるので、ご存知の方も多いと思います。
 白保でも、となりの集落では「ノウバヒナイサー」というそうですから、そのことばの多様さがうかがえます。

 ちいちゃんがひこおじぃからもらうサカキ(榊)の枝は、本州のサカキと同じ種類で、八重山諸島では「神さまの木」として、よく神棚に供えられます。

 八重山諸島には、その地域ごとにたくさんの方言や文化があり、また場所によっては、それらが混ざっていたりもしますが、どの島にも通じるのは、美しい海と常夏の豊かな自然、そして人びとのあたたかさです。

                              岩井真木